職種名にとらわれない経験の棚卸し 実際に担ってきた役割から転職の選択肢を考える
名刺の職種名と、実際に担っている仕事は一致しないことがあります。経験を「役割」に分けて棚卸しする方法と、求人票を職種名ではなく担う役割で読む観点を、転職を考え始めた方向けに整理します。

転職を考え始めると、まず「自分は営業職だから、次も営業職の求人を見る」「マーケティング担当だから、マーケティングの求人を探す」と、いまの職種名を起点に考える方が多いと思います。自然な進め方です。ただ、求人を見ていくうちに「どれもしっくりこない」「自分の経験がこの求人に当てはまるのか分からない」と迷うこともあります。
その迷いは、経験が足りないからとは限りません。名刺に書かれた職種名と、日々の仕事で実際に担っている役割がずれている場合があります。会社の中での呼び方は「営業」でも、仕事の中身を見ると、既存のお客様の活用支援や導入の伴走が中心ということもあります。
この記事では、職種名ではなく「実際に担ってきた役割」で経験を棚卸しする考え方を整理します。自分の経験を正確に捉え直すと、見るべき求人の範囲が広がることもあれば、逆に「ここは違う」と判断しやすくなることもあります。
職種名と実際の役割は一致しないことがある
会社によって、同じ職種名でも担う範囲は大きく異なります。たとえば社内ではフィールドセールスと呼ばれていても、実際の仕事が既存顧客との関係を深めること、導入の支援、利用の促進であれば、それはカスタマーサクセスに近い役割を担っていると見ることもできます。
反対に、同じ「マーケティング責任者」という肩書きでも、ある人は部下の育成に多くの時間を使い、別の人は売上や利益に向けたチャネル戦略を自ら考えて動かしている、ということがあります。肩書きは同じでも、次に活かせる経験や、次に伸ばしたい方向は違ってきます。
転職の場面では、職種名は手がかりの一つにすぎません。大事なのは「自分はどの役割を、どの範囲で、どれくらい担ってきたか」です。ここを言葉にできると、求人を選ぶときにも、面接で経験を伝えるときにも土台になります。
経験を「役割」に分けて書き出す
経験の棚卸しでは、仕事を一つのかたまりとして書くより、いくつかの観点に分けると整理しやすくなります。
時間の使い方の比率で見る
いまの仕事を、たとえば「人のマネジメント」「戦略を考える」「進行管理やディレクション」「実際の運用や実務」に分け、それぞれにどれくらい時間を使っているかを見てみます。そのうえで、これからどの比率を増やしたいかも並べてみます。
「管理職からプレイヤーに戻りたい」という気持ちも、この比率で見ると中身がはっきりします。責任を減らしたいのではなく、育成よりも成果に直結する戦略や実務に時間を使いたい、ということかもしれません。
自分で手を動かしたことと、まとめ役を担ったことを分ける
同じ施策でも、自分で直接運用した部分と、外部のパートナーや他部署に任せて管理した部分があるはずです。両方とも経験ですが、性質が違います。分けて書いておくと、求人の要件と照らし合わせやすくなります。
「一人で担当している」という経験も、同じ職種の正社員が自分だけなのか、関わるメンバー全体で自分だけなのかで意味が変わります。外部との分担、相談相手の有無、レビューの実態まで書き出しておくと、自分の経験を正確に伝えられます。
プロジェクト全体の成果と、自分の寄与を分ける
事業やチーム全体の成果と、自分が直接増やした成果は分けて整理しておくと、説明に無理がなくなります。立ち上げに関わった数字なら、期間、かかった費用、自分が担った部分まで添えると、経験の重みが伝わりやすくなります。
よくあるつまずき:経験を小さく、または大きく見積もる
役割で棚卸しをしないと、経験を実際より小さく見積もったり、逆に大きく見せてしまったりすることがあります。
一つ目は、小さく見積もるケースです。「広告の運用は一部外注していたから、広告経験とは言えない」と考えてしまう方がいます。しかし、媒体や時期によって直接運用していた部分があれば、それは経験です。外注を管理していた経験も、別の価値として整理できます。
二つ目は、大きく見積もるケースです。プロジェクト全体で使われていた技術や手法を、自分の経験として書いてしまうことがあります。全体の構成と自分の担当範囲は分けておくほうが、入社後のずれを防げます。進行中でまだ結果が出ていない取り組みも、「成果」ではなく「取り組んでいること」として区別しておくと誠実に伝えられます。
三つ目は、「上流に行きたい」を職種名に直結させてしまうケースです。「上流」という言葉は、人によって指すものが違います。課題を設定すること、技術的に検証すること、知見を社内外に発信すること、施策を考えること、効果を確かめること。このうちどこを増やしたいのかを分けると、目指す方向が具体的になります。
また、個人で学んでいることと、業務として担当し評価されることも分けて考えると整理しやすくなります。学習は大切な土台ですが、それを仕事として任されている環境かどうかは、求人ごとに確かめる必要があります。
求人票も職種名ではなく「担う役割」で読む
経験を役割で整理できたら、求人票も同じ視点で読んでみます。職種名だけで判断すると、合う求人を見落としたり、合わない求人に進んでしまったりすることがあります。
求人を見るときは、次のような順で考える見方があります。
- その求人で担う役割は、自分が担ってきた役割、これから担いたい役割と重なるか
- 必須の要件を満たしているか
- 転職を考えたきっかけ、いま感じている違和感が、その環境で解消されそうか
- 中長期でなりたい姿に近づくか
- 年収、勤務地、働き方などの条件は現実的か
- その求人に応募する理由を、自分の言葉で説明できるか
「事業会社か、支援会社か」「自社サービスか、受託か」といった区分も、名前だけでは判断しきれません。実際にどこまで実行する権限があるか、育成の負担はどれくらいか、成果にどこまで関われるか、専門性がどう評価されるか。こうした中身で比べると、自分に合う環境が見えやすくなります。
明日からできる整理のしかた
時間をとって一度に完成させる必要はありません。次の問いを、思いついたところから書き出してみてください。
- 直近で取り組んだ仕事を一つ選び、「課題を決める」「周りと話し合う・確認してもらう」「決める」「実際に進める」「結果を確かめる」の流れでたどる。自分が関わったのはどこで、どこで手が止まったか
- いまの仕事の時間の使い方を、マネジメント・戦略・進行管理・実務などに分けると、それぞれどれくらいか。これからどの比率を増やしたいか
- 自分で直接やったこと、他の人や外部に任せて管理したことを分けると、それぞれ何があるか
- チームや事業全体の成果と、自分が直接生み出した成果は、それぞれ何か
- 個人で学んでいることのうち、業務として担当し評価されたいものはどれか
- いまの職場で残したいよさは何か。一つの条件が解消されたら、いまの職場に残る選択もありうるか
最後の問いは大切です。役割で整理してみると、「転職しなくても、いまの職場で担当を広げられるかもしれない」と気づくこともあります。それも一つの意思決定です。
よくあるご質問
職種を変えるつもりはないのに、役割で棚卸しする意味はありますか
あります。同じ職種でも、会社によって担う範囲や評価のされ方は違います。役割で整理しておくと、同じ職種の求人の中でも「どの会社なら自分の望む比率で働けるか」を比べやすくなります。面接で経験を具体的に伝えるときにも役立ちます。
外注や他部署に任せていた部分は、経歴に書いてもよいのでしょうか
書いて構いません。ただし「自分で運用した」と「管理した」を分けて書くことをおすすめします。管理する経験には、要件を決める、品質を確かめる、関係者を動かすといった価値があります。正確に書くほうが、入社後に期待される役割とのずれも起きにくくなります。
自分の役割を整理しても、どの求人に結びつくのか分かりません
自分の経験の呼び方と、求人での呼び方が違うことはよくあります。そのため、一人で結びつけようとすると難しく感じるかもしれません。整理した内容をもとに、第三者と一緒に「この経験はどの役割に近いか」を話してみると、自分では見ていなかった選択肢に気づくことがあります。
まとめ
職種名は経験の手がかりの一つですが、それだけで次の選択肢を決めると、経験を小さく見積もったり、合わない求人に進んだりすることがあります。時間の使い方の比率、直接やったことと管理したこと、全体の成果と自分の寄与を分けて書き出すと、自分の経験を正確に捉えやすくなります。求人票も、職種名ではなく担う役割や権限で読むと比較しやすくなります。整理した結果、いまの職場に残るという判断になることもあります。転職を決めていない段階でも、経験の整理のために相談してみる、という選択肢もあります。
編集:Staneer株式会社 掲載日:
