「年収を上げたい」の奥にある本音 転職理由を言語化して転職の軸をつくる
年収アップやスキルアップといった転職理由の奥には、まだ言葉になっていない本音があることがあります。条件を「結果」として見直し、本当のモヤモヤを言葉にして転職の軸につなげる整理のしかたをまとめました。

「なぜ転職を考えているのですか」と聞かれると、「年収を上げたい」「スキルアップしたい」「裁量がほしい」と答える方が多いと思います。どれも本当の気持ちです。ただ、そう答えながらも、どこかしっくりこない感覚が残ることもあるのではないでしょうか。
求人を見ると、年収が上がる会社もスキルが身につきそうな会社もたくさんあります。それでも、どれを選べばいいのか決めきれない。そう感じるときは、最初に口にした転職理由の奥に、まだ言葉になっていない本音があるのかもしれません。
この記事では、表に出ている転職理由と、その奥にある本音を分けて整理する考え方を紹介します。本音が言葉になると、「次はどんな環境を選ぶか」という転職の軸も見えやすくなります。
「年収を上げたい」は、目的ではなく結果かもしれない
年収、スキルアップ、働き方の改善。こうした条件は、転職を考えるきっかけとしてとても自然なものです。そのうえで、これらを「目的」ではなく「結果」として捉えてみる見方があります。
たとえば、本当にやりたいことに夢中で取り組んだ結果、スキルが身につく。スキルが身についた結果、年収が上がる。組織にとって欠かせない存在になった結果、働き方の自由度も上がっていく。こう考えると、条件は「何に熱量を注いだか」のあとからついてくるものだと分かります。
条件だけを転職の軸にすると、年収が少し上がる求人は見つかっても、入社後に同じモヤモヤが再びわいてくることがあります。モヤモヤの原因が年収そのものではなかった場合、条件が変わっても根っこは変わらないからです。
だからといって、条件を気にしなくていいわけではありません。条件は大切なものです。そのうえで、「条件の奥に何があるのか」をもう一段掘り下げてみると、転職理由の輪郭がはっきりしてきます。
本音の転職理由は、どんな形で隠れているか
表に出ている転職理由が同じでも、その奥にある本音は人によって違います。よくある組み合わせを、いくつか例として挙げてみます。
「年収を上げたい」の奥にあるもの
- 自分の考えをもっと組織に反映したいのに、上から降ってきたことをこなすだけになっている
- データや仕組みで改善したいのに、組織が感覚や勢いで動いている
- チームで成果を出したいのに、一人ひとりが個人商店のように動いている
「スキルアップしたい」の奥にあるもの
- 深めてきた専門性が、調整や雑務に時間を取られて伸ばしきれていない
- 事業や組織を動かす側に行きたいのに、決められた範囲を回す役割に固定されている
- 一つのことをじっくり育てたいのに、次々と新しいことが降ってきて腰を据えられない
「裁量がほしい」の奥にあるもの
- 役職や年収よりも、自分のやり方で判断できないこと自体がつらい
- まだ誰も答えを持っていないテーマに挑みたいのに、決まった型を回す仕事になっている
- 意思決定の遅さそのものより、その結果、顧客やユーザーに価値が届くのが遅れることがもどかしい
同じ「裁量がほしい」でも、自由に判断したい人、新しいことに挑戦したい人、誰かに早く価値を届けたい人では、合う環境がまったく変わります。表に出ている言葉だけで求人を選ぶと、ここがずれやすくなります。
よくあるつまずき:言葉をそのまま転職の軸にしてしまう
本音を探るときに、よくあるつまずきがいくつかあります。
「好きなこと」を名詞で考えてしまう
「営業が好き」「チームが好き」「企画がしたい」。こうした言葉は、名詞のままだと本音が見えにくくなります。大切なのは、その仕事のなかの「どの行為」に熱量があるのかを、動詞で捉えることです。
たとえば「チームが好き」という言葉には、少なくとも二つの意味がありえます。
- 仲間と一つの目標に向かうこと自体が嬉しい。誰かが働きやすくなることにやりがいを感じる
- チームを通じて、自分の考えややり方を広げていきたい。影響力を大きくしたい
前者なら、関係性やチームの雰囲気を大切にする環境が合いそうです。後者なら、自分の考えを反映できる立場や役割が重要になります。同じ言葉でも、選ぶべき会社は変わってきます。
現職への強い感情に引っ張られる
現職への不満やストレスが強い時期は、自己分析の結果が本来の気持ちと逆に出ることがあります。たとえば、今の環境に強く反発していると、「とにかく自由に動きたい」「とにかく挑戦したい」という気持ちが、実際よりも大きく感じられることがあります。
これは悪いことではありません。ただ、そのときの気持ちだけで軸を決めると、反動で選んだ環境が実は合わなかった、ということも起こりえます。今の感情と、もともと大切にしてきたものを分けて見ることが助けになります。
「やらなければ」と「やりたい」が混ざる
「年収を上げるにはマネージャーになるしかない」「経験があるからこの職種で探すしかない」。こうした考えは、「やりたい」ではなく「やらなければ」から生まれていることがあります。その希望が、どちらから来ているのかを一度確かめてみる価値はあります。
明日からできる整理のしかた
本音の転職理由は、自分への問いかけを重ねることで少しずつ見えてきます。次の順番で整理してみると、考えをまとめやすくなります。
1. 表に出ている転職理由を、まずすべて書き出す
年収、働き方、人間関係、成長実感など、思いつくものをそのまま書きます。この段階では深掘りせず、「他にはないか」と自分に聞いて出し切ることを優先します。
2. それぞれに「それが叶ったら、何が変わるか」と問う
- 「年収が上がったら、何が満たされると思いますか」
- 「裁量があったら、具体的に何をしたいですか」
答えが「特に変わらないかもしれない」なら、その条件は本音の中心ではない可能性があります。
3. 過去の経験と照らし合わせる
- 「これまでで一番楽しかった仕事は、何が良かったのか」
- 「一番苦しかった時期は、何がつらかったのか」
- 「その行動は、誰にも褒められなくてもやりたいと思えるか」
楽しかった経験とつらかった経験を並べると、自分が大切にしているものが浮かび上がってきます。現職への感情に引っ張られていないかを確かめる材料にもなります。
4. 「何が好きか」を動詞に言い換える
「営業が好き」なら、顧客の課題を読み解くことか、提案を組み立てることか、関係を長く育てることか。名詞を動詞に分けると、次の環境で何を大切にしたいかが具体的になります。
5. 本音を一文にまとめる
「本当は〇〇したいのに、今は△△になっていることがモヤモヤの正体かもしれない」という形で書いてみます。言い切れなくても構いません。仮の言葉にしておくだけで、求人を見るときの目線が変わります。
本音の裏返しが、転職の軸になる
本音の転職理由が言葉になったら、それを裏返してみます。
「データや仕組みで改善したいのに、組織が感覚で動いている」が本音なら、裏返した軸は「仕組みづくりやデータ活用に取り組める環境」です。「誰かの役に立っている実感がない」が本音なら、「顧客やユーザーの顔が見える仕事」が軸になります。
こうして見ると、転職の軸は三つの層で考えられます。
- 最初から持っていた希望(年収、働き方など)
- 本音の転職理由を裏返した軸
- 数年後にどうなっていたいかから逆算した軸
最初の希望だけでなく、二つ目、三つ目の層がそろうと、求人の見え方が変わってきます。条件は同じくらいでも、「この会社なら本音のモヤモヤが解消されそうだ」と判断できるようになります。すでに選考を受けている会社についても、本音から見て近いのか遠いのかを確かめ直すことができます。
また、本音を整理した結果、「今の会社でも実現できるかもしれない」と気づくこともあります。転職だけが正解ではありません。本音が見えることは、残るか動くかを含めて、自分で納得して決めるための材料になります。
よくあるご質問
年収を上げたいという気持ちが本音の場合は、どう考えればいいですか
年収を大切にすることは、まったくおかしなことではありません。そのうえで、「なぜ年収を上げたいのか」「年収が上がったら何が満たされるのか」を少しだけ掘り下げてみると、優先順位が整理しやすくなります。生活の安心が理由なら、それは大切な条件として明確にしておく。仕事への評価を実感したいのが理由なら、評価のされ方や役割の広がりも軸に加える。このように分けて考えると、選ぶ会社の幅が広がることがあります。
自分で考えても、本音がよく分かりません
一人で考えていると、今の感情や思い込みに引っ張られて、同じところを回ってしまうことはよくあります。適性検査で自分の傾向を知ったり、第三者との対話で「それはこういうことですか」と仮説を返してもらったりすると、「言われてみればそうだった」と気づけることがあります。Staneer Agentでは、適性検査の結果とキャリアセッションでの対話を組み合わせて、本音の転職理由を一緒に言葉にしていきます。
適性検査の結果と、自分の実感が違うときはどうすればいいですか
検査結果は、あくまで自分を理解するための仮説の一つです。受検したときに現職へのストレスが強かったり、質問の意味を別の受け取り方をしていたりすると、結果が実感とずれることがあります。その場合は、ご自身の実感や過去の経験を優先して構いません。ずれた理由を考えること自体が、本音に近づく手がかりになります。
まとめ
「年収を上げたい」「スキルアップしたい」といった転職理由は、目的ではなく結果として見直せることがあります。その奥にある本音を、過去の経験や動詞での言い換えを通して言葉にすると、自分に合う環境の条件がはっきりしてきます。本音の転職理由を裏返したものが、次の会社を選ぶ軸になります。整理した結果、今の会社に残るという判断が見えてくることもあります。転職を決めていない段階でも、考えを整理するために相談してみる、という選択肢もあります。
編集:Staneer株式会社 掲載日:
