インサイドセールスの次のキャリア 日々のモヤモヤから進む方向を見立てる
インサイドセールスの次の道が「フィールドセールスかマネージャー」に見えやすいのはなぜか。日々感じる違和感を5つに分け、職種・組織・事業のどれを変えるべきかを整理する考え方をまとめます。

架電の目標は毎月達成している。断られることにも慣れた。それでも、このまま3年後も同じ画面とヘッドセットの前にいる自分が、うまく想像できない。インサイドセールス(IS)として働く方から、こうした話を聞くことがあります。
そして次に出てくるのが「では、何になりたいのか」という問いです。ここで手が止まる方が少なくありません。社内を見渡すと、道は「フィールドセールスに移る」か「ISのマネージャーになる」の二つしか見えない。どちらもしっくりこないけれど、それ以外の選択肢を言葉にできない。結果として、転職サイトを開いては閉じる時間だけが積み上がっていきます。
この記事では、ISとして働く中で感じる違和感を5つに分け、自分が変えたいのは「職種」なのか「組織」なのか「事業そのもの」なのかを見立てる方法を整理します。進む先を先に決める話ではありません。今のモヤモヤを、方向を示すサインとして読み替えるための整理です。
次の道が二つに見えやすいのは、社内に前例がないから
ISの次のキャリアが狭く見えるのは、その人の視野が狭いからではありません。多くの場合、社内にそれ以外の前例が存在しないからです。
ISを「商談をつくる機能」として置いている組織では、設計されているキャリアも「商談を担当する側に移る」か「ISチームをまとめる側に回る」の二つになりがちです。マーケティング寄りの仕事、営業の育成や仕組みづくり、営業の業務設計といった隣の領域に移った人が社内に一人もいなければ、その道は「ない道」として認識されます。登用の基準が明示されないまま年数が過ぎると、焦りだけが先に立つこともあります。
もう一つの理由は、経験が「件数」に圧縮されて記録されることです。日々の振り返りが架電数と商談化数で語られていると、自分が何を考え、何を工夫してきたかが残りません。同年代の人が受注金額を語る場で、自分は件数しか語れない。そんな場面をきっかけに、「自分には語れる経験がない」という感覚が強まっていきます。
ここで必要なのは、新しい職種名を探すことではなく、今の仕事の中で自分が何に引っかかっているのかを分けることです。引っかかりの種類が違えば、変えるべき対象も変わります。
よくあるつまずき 「契約を決める経験がないから営業として語れない」と考える
よくあるつまずきは、社内の空気をそのまま市場の評価だと受け取ってしまうことです。
「ISは営業の入口」という言い方が社内で使われていると、自分の経験は本物の営業経験ではない、まずは商談を担当する側を経験しないと何も語れない、と思い込みやすくなります。たしかに、契約を決める場面に立った経験が薄いことは事実かもしれません。ただ、それは「経験がゼロ」とは違います。
たとえば、こうした役割を実際に担ってきていないでしょうか。
- 短い会話の中で、相手の状況と優先順位を掴む
- 断られた理由を記録して分類し、翌週の話し方に反映する
- リストの傾向から、反応が得られやすい条件を見つける
- マーケティング側や商談担当者との間で、引き継ぎの基準をすり合わせる
- 新しく入った人のロールプレイ相手になり、つまずきやすい箇所を言葉にする
これらは「架電数」という一語に埋もれますが、仕事としては別のものです。一方で、薄い経験を厚く見せる必要もありません。相手の課題を深く聞く経験や、契約まで責任を持つ経験が足りていないと感じているなら、それは「これから得たい経験」として、むしろ軸の材料になります。足りないものを隠すより、どこを埋めたいのかを明確にしたほうが、選択肢は絞りやすくなります。
モヤモヤを5つに分けると、向かいたい方向が見えてくる
ISの方から聞く違和感は、おおむね次の5種類に分かれます。どれが一番強いかで、変えるべきものが変わります。
1. 量で測られることへの違和感
架電数のランキングが貼り出される。朝会で件数だけが確認される。話し方の質を一緒に磨いてくれる人がいない。こうした違和感が強い場合、裏返すと「過程や質も含めて見てもらえる環境で働きたい」という希望になります。向かう先の候補は、通話内容の分析や話し方の設計、新しく入った人の立ち上げ支援といった、営業の育成と仕組みづくりの領域です。あるいは、評価の考え方が異なる組織で同じISを続ける選択もあります。
2. 設計に関われないことへの違和感
リストの質が成果を左右するのに、その選び方には意見できない。件数を重ねる進め方ではなく、ターゲット企業を深く調べて攻める形にしたい。メールや行動履歴を使ってリードを育てる仕組みをつくりたい。これらが強い場合、裏返すと「アプローチの設計そのものに関わりたい」という希望です。マーケティング寄りの仕事や、営業の業務設計、戦略的な進め方を採っている組織のISなどが候補になります。
3. 貢献と評価がつながらない違和感
苦労して引き継いだ案件が別の人の実績として残る。商談の有効性の判定が相手の見方に委ねられる。目標を達成しても、評価の根拠が示されない。この違和感が強い場合、裏返すと「成果を自分の手で見届けたい」「評価の根拠が見える場で働きたい」という希望になります。商談から受注まで一貫して担う営業に移る選択は、ここに当てはまります。
4. 働き方の前提への違和感
昼休み以外はほぼ架電。合間に入力作業とメール対応。考える時間が一日のどこにもない。育児や介護で使える時間が減ると、量の目標では構造的に届かない。電話はどこからでもかけられるのに、毎日の出社が前提になっている。この違和感が強い場合、変えるべきは職種ではなく、働き方の前提を置いている組織のほうかもしれません。
5. 事業や商材への納得感の薄さ
自分では欲しいと思えないものの魅力を、少し盛って話している。誰の役に立っているのかが掴めない。この違和感が強い場合、職種を変えても解消しないことがあります。裏返すと「意義を実感できる事業の前に立ちたい」という希望で、これは職種選びではなく事業選びの軸になります。
明日からできる整理のしかた
分類は、頭の中だけでは進みにくいものです。次の順で手を動かすと整理しやすくなります。
- 直近1か月で引っかかった場面を、思い出せる限り書き出します。評価面談、朝会、架電中、同年代との会話など、場面ごとに短く書きます。
- それぞれを、上の5つのどれかに振り分けます。迷うものは両方に入れて構いません。
- 数ではなく「重さ」で並べます。回数は少なくても、思い出すと胸が重くなるものが上に来ます。
- 一番重いものを、「〜が嫌だ」から「〜したい」の文に書き換えます。これが軸の素案になります。
- その「したい」が、今の会社で叶う余地があるかを考えます。一度でも提案したことがあるか。誰に言えば判断が動くか。動かない理由は、構造なのか、人なのか、時期なのか。
あわせて、自分に投げかけておきたい問いが三つあります。架電の中で一番おもしろいと感じた瞬間はどこだったか。受付を越えた瞬間か、相手の課題が見えた瞬間か、立てた仮説が当たった瞬間か。考える時間が増えたとして、自分は何を考えたいのか。そして3年後、何を語れるようになっていたいか。
求人情報を先に見ると、情報の多さに引っ張られて自分の重さが見えなくなりがちです。順番としては、この整理を先に置いたほうが振り回されにくくなります。
現職に残る選択も、同じ土台で比べる
整理を進めると、「変えたいのは職種ではなく、評価のされ方だった」と気づくことがあります。その場合、転職が唯一の手段とは限りません。希望する領域に近い業務を部分的に引き受けてみる、通話内容の分析を小さく試して提案してみる、といった動き方も選択肢に入ります。
一方で、提案しても優先度が上がらない、方針が変わるたびに前提がやり直しになる、といった状態が続いているなら、それは個人の努力の量で動く話ではないかもしれません。ここで見るべきは「自分がもっと頑張れば変わるか」ではなく、「決める人と仕組みが変わる見込みがあるか」です。
転職は必ずしも正解ではありません。残る判断も、ひとつの意思決定です。どちらを選ぶにしても、同じ軸で両方を見比べておくと、選んだ後の納得感が変わってきます。
よくあるご質問
商談を担当する経験を積まないまま、別の職種に移るのは不利になりますか
一律に不利とは言えません。見られているのは職種の順番よりも、これまで何を考えて動いてきたか、そしてこれから何を担いたいかの一貫性です。たとえば、話し方の改善を自分で記録して試してきた経験は、育成や仕組みづくりの領域と自然につながります。反応が得られやすい条件を探してきた経験は、アプローチの設計と結びつきます。ただし、契約まで責任を持つ経験が必要な仕事では、その不足は率直に扱うことになります。何を補う前提で移るのかを、自分の中で決めておくと話しやすくなります。
インサイドセールスを続けた年数が増えると、選択肢は狭まりますか
年数そのものより、その年数で何が積み上がったかのほうが語りにくさに影響します。同じ期間でも、与えられたリストを順に消化してきた場合と、リストの切り方や話し方の仮説を自分で回してきた場合では、話せる内容が変わります。今の時点で前者に近いと感じても、残っている記録から拾い直せることは少なくありません。年齢や年数への不安が強いときは、その不安が「市場の評価」なのか「社内で見聞きした空気」なのかを分けてみると、少し落ち着いて考えられます。
社内での異動希望と転職の検討は、どちらを先に進めるべきですか
順番に決まりはありませんが、先ほどの整理を済ませておくと判断しやすくなります。変えたいものが評価のされ方や働き方の前提であれば、社内で動く余地を確かめる価値があります。変えたいものが事業や商材そのものであれば、社内の異動では解消しにくいこともあります。両方を並行して考えることも可能です。その場合も、比べる軸は同じものを使うようにすると、条件の見え方に流されにくくなります。
まとめ
ISの次のキャリアが「商談を担当する側か、まとめる側か」に見えるのは、社内にそれ以外の前例がないからという事情が大きいものです。日々の違和感を、量で測られること、設計に関われないこと、貢献と評価のずれ、働き方の前提、事業への納得感の5つに分けると、自分が変えたいのが職種なのか組織なのか事業なのかが見えてきます。そして、嫌だと感じていることの裏返しが、そのまま転職の軸になっていきます。現職に残る判断も、同じ軸で比べておくと納得して選べます。転職を決めていない段階でも、この整理を誰かと声に出して進めてみる選択肢はあります。Staneer Agent でも、方向が定まる前の段階からのご相談をお受けしています。
編集:Staneer株式会社 掲載日:
